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【主張】マラソンの厚底靴 科学的根拠のある規制を

 マラソンの好記録続出の要因とされる厚底シューズについて、世界陸連(WA)は靴底を厚さ40ミリ以内、中に埋め込むプレートは1枚までなどとする規制を打ち出した。すでに流通している製品は東京五輪で使える。

 日本の男女代表残り1枠だけでなく、これから代表選考を控えた国・地域もある。選手たちの混乱を避ける上でも妥当な判断だろう。

 問題視されている靴はナイキ社製で、2016年リオデジャネイロ五輪王者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が履いて18年に世界記録を樹立した。女子の世界記録や男子の日本記録も同タイプの厚底靴から生まれている。

 薄いソール(靴底)が主流だった従来の靴と違い、ナイキ社製は分厚いソールの中に埋め込まれた炭素繊維のプレートが高い反発力を生み、好記録につながったとされる。今年の箱根駅伝では8割超の出場選手がナイキ社製を履き、往復10区間のうち6区間で区間記録を更新した。

 「より速く」という競技者の要求は当然で、人類の可能性を開くメーカー側の用具開発は本来なら否定されるべきではない。だが、マラソンの景色を変える新記録ラッシュには違和感を覚える。「ドーピングシューズ」との批判も的外れとは言えまい。

 今回の騒動は、米大リーグで03年に強打者が使用して出場停止になったコルク入りバット、08年北京五輪などで競泳の世界記録を次々と塗り替えた高速水着をほうふつさせる。競技のあり方を根底から変えてしまう用具開発には、どこかで歯止めが必要だろう。

 WAの競技規則では跳躍系種目の靴底に厚さ規制があるだけで、マラソンなどの路上種目については「使用者に不公平となる助力や利益を与えるようなものであってはならない」と、あいまいな規制にとどまっていた。

 WAは厚さ規制に加え、流通から4カ月以上経過している製品を使用条件とする方針だが、それだけでは解決策にならない。靴底から生まれる反発力の上限を数値で示すなど、科学的に検証ができる規定を設けるべきだ。

 競泳界では少しずつだが、高速水着時代の世界記録が塗り替えられ、人間の可能性を示している。競技の主役は選手だ。用具主導と映る現状は、マラソンの魅力を少なからず削(そ)いでいないか。

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