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大学合格はゴールではない ~未来を見据え、後悔のない受験を~

 私立大学の入学定員管理厳格化や大学入学共通テストへの移行などを背景に、受験に対する安全志向が年々高まっている。「第1、2志望ではないが、とにかく大学へ」。そうした意識から高卒生(浪人生)は減少傾向にある。一方で、入学したにも関わらず上位大学への受験対策を続けたり、「やはりあの大学に入りたい」という夢を追いかけ、就職後に再び受験に臨む社会人もいる。なぜ、受験に再挑戦するのだろうか。最初の受験時に偏差値だけに左右され、安易に大学を選択し、後悔を抱えていたのではないだろうか。大学入学は将来に向けたスタート地点だ。学びたい分野や将来を見据えた受験への備えが重要になってくる。

高卒生減少。「とにかく大学に入る」という風潮

 「高卒生(浪人生)は2000年をピークに減少傾向にあり、この数年は顕著です。18歳人口は減っているのに、大学数は増加しています。こうした社会の変化もありますが、ここ最近の減少傾向の大きな理由はやはり文部科学省が進める私立大学の入学定員管理厳格化です。また、2021年度入試から、大学入試センター試験は新制度の大学入学共通テストに移行予定です。そのため、現在の高校3年生はこうした動きに敏感になっており、変化に対する不安から、『浪人したくない』という意識が働いています。従来はあまり変化のなかった難関大学の志望動向にも影響している印象があります」

 河合塾進学教育事業本部副本部長の船津昌己さんは、高卒生の減少傾向と大学受験を取り巻く安全志向といわれる現状況について、こう分析する。

河合塾校舎長などを歴任し、受験指導や高校教員向けの講演などで活躍する船津さん。「子供たちの挑戦心を見つめることが大切」という
河合塾校舎長などを歴任し、受験指導や高校教員向けの講演などで活躍する船津さん。「子供たちの挑戦心を見つめることが大切」という
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 河合塾によると、塾生(高卒生)のうち、2019年度の“合格浪人率”は22・7%。合格浪人とは、受験した複数大学のうち合格校があるにも関わらず、本来の希望ではないことから、入学せずに浪人して再び志望大学を目指す受験生のことをさす。

 「(偏差値上の)安全校として、一応受験した」「本当は国立に行きたいが、私立だけ受かった」など理由はさまざま。合格浪人率は、以前は約30%で推移し、ここ数年その割合は少しずつだが、低下してきている。

 近年は、バブル崩壊後の時代に社会人となった40代半ばにかけての就職氷河期世代が受験生の保護者となりつつある。当時、どの大学の学生たちも、就職活動が困難を極めた。「合格した大学は第1、2志望ではなくとも、とりあえずは大学に入学してほしい。その後は、資格をとって就職に備えて…」と子供の進路を願う保護者の考え方も、合格浪人率を低下させる要因になっているのではと推察しているという。

 また、大学に入ってから退学してしまう学生も一定数存在している。読売新聞教育ネットワーク事務局がまとめた『大学の実力2019』(中央公論新社)によると、2014年(6年制は2012年)4月に入学した学生数のうち、国立大学の退学率は2・9%、公立大学は4・2%。私立大学では8・0%にものぼる。

 退学率の中には、上位大学を狙う“仮面浪人”が含まれている。例えば、第1志望は東京大学だが、大阪大学に合格。大阪大学に通いながら受験対策を続け、東京大学に再挑戦する。合格したら大阪大学を退学して、東京大学に入学する-といった学生たちだ。

 船津さんは、「ただ、偏差値だけに左右されて、安易な選択や妥協で大学を選び、後から『本当は○○大学に行きたかった』と悩み続けることになるのならば、最初の受験の段階でしっかりと自分の将来について考える必要があるのではないでしょうか」と話す。

安全志向。難関大回避の動き

 そうはいっても、受験生の安全志向は今年も続いている。

 河合塾は2019年10月に第3回全統マーク模試を実施し、30万人を超える受験生の志望校を集計。同年12月に「第3回全統マーク模試にみる2020年度入試の動向」を発表した。その中でもやはり、難関大学を敬遠する動きは顕著だった。

私立大学文系学部のうち、主要大学グループ別の志望者前年比を見てみよう=図表下。

上位校といわれる早慶上理(早稲田・慶應・上智・東京理科)において、受験者偏差値帯60・0~では、志望者が前年比92%、同50・0~で同92%、同40・0%~で同95%と、どの偏差値帯でも減少している。

同様に、MARCHや関関同立グループでも、ボーダーランク前後の層をのぞき、多くの成績層で志望者が減少している。一方、日東駒専、産近甲龍の各グループでは、ボーダーランク以上の高成績層で志望者が増加している。

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 つまり、本来は難関大学を狙える層が、中堅層に流れ込み、難関大学への挑戦を回避している動きが浮かび上がってくる。逆にいえば、第1志望の難関大学にこだわって、直前まで粘り続ける受験生にとっては、この傾向はチャンスだ。

 船津さんは、「法学部に進学したが、考え抜いた末、やはり医学部に行きたいといって予備校に来る学生もいますが、それはそれでいいのです。各大学には特長があり、高校生や予備校生にはそれぞれの希望があります。ただ、第1志望を安易に変えてしまう生徒は、目的や目標が定まっていない場合が多いです。偏差値だけに左右されて、挑戦することをあきらめてしまうのは、とてももったいないことです」と指摘する。

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大学受験。将来を自問自答する機会

河合塾では高卒生には、「夢宣言」を書いてもらう。すると夢に「○○大学に入ること」と記入する塾生が少なくないという。大学に入ることは通過点。学ぶことは「自分が何をしたいのか」を掘り下げることでもある
河合塾では高卒生には、「夢宣言」を書いてもらう。すると夢に「○○大学に入ること」と記入する塾生が少なくないという。大学に入ることは通過点。学ぶことは「自分が何をしたいのか」を掘り下げることでもある
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 船津さんが塾生指導にあたっていたとき、塾生たちに「微分・積分が社会で何の役に立つのか?」とよく質問されたという。「桁を間違えずに緻密な計算を重ねていく作業は、処理能力や集中力、根気がなければできません。例えば、医学部志望の生徒には、微分・積分は時間内に満点を取れるようにしなさいと指導しています。外科医は、緊張感のある限られた時間内で、手術という緻密な作業をミスなくこなすことが要求されます。大学受験のために必死に勉強することは、その予行演習のようなものです。今、目の前にある勉強と将来のさまざまな場面で求められる力との間に、共通点があると自ら気づくことが大切です。河合塾は受験対策の塾として勉強しながらも、つねに目標や希望に立ち返り、夢を語る場所だと思います」と説明する。

 医学部に行きたいという塾生には、こう問いかける。なぜ、医師になりたいのか。「おじいちゃんが、がんでなくなったから」。それはきっかけに過ぎず、理由ではない。○○大学に行きたいというならば、その目的を聞く。何を学びたいのか。大学での学びをどのように将来に繋げていくのか。

「がんの特効薬を作りたい」「政治家になって、日本のこの制度を変えたい」…。18歳前後で将来を見据えることは難しい。それでも、しっかりと将来について考え、具体的なビジョンを描くよう導いていくことが大切だと訴える。

 船津さんは、「大学には、可能性を広げる“触媒”がたくさんあります。学問はもちろんですが、先生方や友人との出会い、サークル活動などもそうです。そうした触媒を、どのように活用していくのかを考えること。目標や希望について自問自答することが大切です。それを叶えることができる環境に自身を置いて、自分を磨いていくためにも、最後まで第1志望にこだわってほしい。そして、将来を見据えて、自分自身が納得できる受験をしてほしい」とメッセージを送っている。

[河合塾]1933年の創立以来、「汝自らを求めよ」の精神で、〈自らを求め、学び続ける人〉を支援。高校生・高卒生向けのコースをはじめ、多彩なコースを設置。詳しくはこちらへ。

提供:河合塾

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