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【車いすラグビー】悔しさばねに成長遂げた橋本勝也選手

 車いすラグビー国内最高峰の大会「三井不動産 第21回 車いすラグビー日本選手権」が昨年12月20~22日、千葉ポートアリーナ(千葉市中央区)で開催され、予選リーグを勝ち抜いた8チームがクラブチーム日本一を競った。出場3年目で、チーム結成以来最高順位の3位まで上り詰めた東北ストーマーズには、悔しさをばねに変えた若手選手の活躍があった。

東北ストーマーズの橋本勝也選手(中央)
東北ストーマーズの橋本勝也選手(中央)
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自身の現状に向き合い飛躍

 最年少でパラリンピック日本代表入りを目指す、福島県の高校生で17歳の橋本勝也選手は、昨年10月に日本で行われた世界大会「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」でベンチ入りした。ところが、世界ランキングで格上の国との対戦では出場機会が得られなかった。

 「(持ち点が同じで、日本代表エースの)池崎(大輔)さんや池(透暢・ゆきのぶ)さんが試合後半、疲れているのに、自分には交代の声がかからない。疲労したメンバーの代わりを務めることさえできない」と、橋本選手は自身の客観的な実力と向き合った。世界大会後、出場できなかったときの悔しさを練習のたびに思い出しながら、課題であるスタミナ強化などに取り組んできた。

 その結果が、今大会の東北ストーマーズ躍進としてあらわれた。

 3日間にわたり開催された今大会は、1、2日目で参加した8チームが4チームずつの2リーグに分かれ、総当たりで対戦。2日目の後半と最終日、この成績をもとに順位決定戦が行われた。

 東北ストーマーズは、初戦の相手ながら、チームにとってリーグ戦最大の山場としていた福岡ダンデライオンを47-42で下す好発進。チーム内で最大の持ち点(3.0)を持つ橋本選手は積極的に攻撃に絡み、チーム得点の半分以上である24点をたたき出した。

 次戦で迎えた、今大会3連覇中の沖縄ハリケーンズには58-42(うち、橋本選手は24得点)、さらに北海道T×T(ティーバイティー)ビッグディッパーズに65-43(うち、橋本選手は22得点)と快勝した。続けて迎えた、決勝戦進出をかけた、日本代表キャプテンの池選手率いる前回大会準優勝のフリーダム(高知)に50-55と僅差で敗北を喫した。

パスを出す橋本勝也選手(右)
パスを出す橋本勝也選手(右)
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 橋本選手は、好敵手であり、目標でもある池選手が率いるフリーダム戦を「一番大事な試合だった」と振り返る。この一戦にかける意気込みは、プレーの違いとしてあらわれた。持ち点が同じ池選手を徹底マークするなか、前のめりな気持ちがそのまま動きに反映されて池選手に倒れこむように重なる場面もあった。会場全体の注目を集めた気迫は、橋本選手が10月の世界大会後、胸に秘めてきた思いの強さをあらわしていた。

 試合後半、チームは連係ミスやパスミスなどで徐々に水をあけられ惜敗。試合後、橋本選手は「後半、スタミナ不足でチームに迷惑をかけた。スタミナが切れたときの判断力の低下が敗因」と肩を落とした。

 東北ストーマーズはフリーダム戦の敗戦で決勝進出を逃したが、3位決定戦で福岡ダンデライオンを下し、3位に入賞。橋本選手は、持ち点3.0クラスのベストプレーヤー賞を受賞した。

ベストプレーヤー賞のトロフィーを受け取る笑顔の橋本勝也選手(右から2番目)
ベストプレーヤー賞のトロフィーを受け取る笑顔の橋本勝也選手(右から2番目)
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 橋本選手は大会中も試合ごとに自身のプレーを振り返り、成長を続けた。初戦では、チームが攻撃に移る場面で、攻め込みやすいよう相手陣地のトライラインに近い位置まで上がることが多かった。このとき、ボールを運ぶ役割を持つ自チームのローポインターの選手が相手選手に囲まれ苦戦している様子を見て、「もっとボールに絡んでいかなくては」と考え、次戦からはボール運びに参加するなど、プレーに微修正を加えながら大会を通して実力に磨きをかけ続けた。「チームとしても、力が上がってきた。これからもっとチームを引っ張っていき、来年はさらに進化した自分を見せたい」

精巧なパスで念願の1勝

 「2年前にはまったくの無名だった選手が、日本代表の候補として挙げられている。その成長ぶりには驚かされる」

 パラリンピック日本代表のヘッドコーチを務める、ケビン・オアー氏をうならせるのは、今大会2.5クラスのベストプレイヤー賞を受賞した北海道T×T(ティーバイティー)ビッグディッパーズの20歳、白川楓也(ふうや)選手だ。

ルーズボールに飛び込む北海道T×Tビッグディッパーズの白川楓也選手(右)
ルーズボールに飛び込む北海道T×Tビッグディッパーズの白川楓也選手(右)
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 今年4月、日本代表のエース・池崎選手がビッグディッパーズから、自身が立ち上げた新チーム、東京サンズに移籍した。大幅な戦力ダウンを余儀なくされたビッグディッパーズだが、そのなかで颯爽とコートを駆け抜ける銀髪の白川選手は人目を引いた。

 白川選手は2016年、高校生のときに体操の国体予選中の事故で頸髄損傷し、車いすを利用し始めた。車いすラグビーを始めたきっかけは、リオ・パラリンピックの直後、池崎選手に声をかけられたことだった。プレーするなかで車いすラグビーの面白さに気づき、のめりこんでいった。その体験を「人生が変わった」と振り返る。

白川楓也選手(中央)
白川楓也選手(中央)
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 この経験は、自身が車いすラグビーのスキルを上達させる理由にもなっている。「日本代表選手からかけられる言葉と、そうでない場合の言葉は違うと思う。だから、僕は代表入りを目指している。僕自身の人生を変えてもらったように、ほかの人の人生に少しでもよい影響を与えることができたらうれしい」と話す。

 チームの要である白川選手は精巧なパスを駆使し、大会3日目の順位決定戦において46-42で沖縄ハリケーンズを下し、チームを今大会の目標としていた1勝へ導いた。今後の課題については「動きながらもピンポイントでパスを出せるよう、もっと力をつけたい」と語った。

パスを放つ白川楓也選手(中央)
パスを放つ白川楓也選手(中央)
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 白川選手が車いすラグビーを始めるきっかけとなった池崎選手は、「ここまでのめりこんでくれて、上を目指す志を持った人が育ったのは、すごくうれしいです。彼自身の持つ意識の高さと負けん気の強さで、これからしっかり経験を積みながら、一つ一つ成長してもらえたらいいなと思います」とエールを送った。(フジテレビ)

フリーダムの池透暢選手(左)と東京サンズの池崎大輔選手
フリーダムの池透暢選手(左)と東京サンズの池崎大輔選手
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