【再起動 米国と世界】正恩氏、核兵器列挙も手詰まり露呈 米韓の不協和音に懸念

北朝鮮で12日まで8日間開かれた朝鮮労働党大会で、総書記に就任した金正恩(キム・ジョンウン)氏は「最大の主敵である米国を制圧、屈服させる」ことに対外政策の焦点を合わせると表明した。このことから、バイデン米政権の発足に合わせ、核・ミサイル開発を盾に米国と対峙(たいじ)する強硬路線に回帰したとの見方が強まっている。
正恩氏は米首都ワシントンを射程に収める1万5千キロ圏内への「核先制攻撃力の高度化」に言及。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を迅速に発射するための固体燃料エンジンや一度に複数カ所を攻撃できる多弾頭の開発、原子力潜水艦の建造計画も明らかにした。
設計段階のものまで列挙したのは、バイデン大統領がオバマ元政権の「戦略的忍耐」のように北朝鮮の要求を無視し続ければ核兵器開発を加速すると揺さぶりをかける狙いとみられる。
韓国の李仁栄(イ・イニョン)統一相は、北朝鮮が「硬軟どちらにも移れる余地を残した」と指摘。バイデン政権の対北政策が固まるまで様子見をしているとの見方を示した。統一省高官は、北朝鮮が内部の結束に比重を置きつつ、対米政策については「さまざまな可能性を開いておいた」と分析した。
北朝鮮はトランプ前政権時代、正恩氏を批判したバイデン氏を「執権欲に狂った老いぼれ」と罵倒したが、今回はバイデン氏を直接非難しなかったばかりか、バイデン政権に言及することさえなかった。
米側を最も刺激するICBMについても、昨年10月に新型を公開しておきながら、今月14日の軍事パレードには登場させなかった。
韓国の情報機関、国家情報院は昨年11月の米大統領選後、北朝鮮が在外公館に対し、「米国を刺激する対応を取るな」と命じていたと国会で報告していた。